ふじごこふるさと むかしばなし 第二集・収録

 むかしむかし 河口湖に くいしんぼうで力じまんの かっぱがすんでいました。
ある日、村一ばんの力もち 安太郎さんが こはんを あるいていると かっぱが 「おれと すもうをとるべえ」と こえを かけてきました。

見ると こどもくらいの 大きさのかっぱです。
安太郎さんは にっこりとして うなずきました。
力じまんのかっぱと 人げんのすもうが はじまりました。
「ハッケヨーイ のこった。」

がっぷり 四つにくんで おどろいたのは 安太郎さんです。

その小さなかっぱの 力のつよいことといったらない おしてもひいても びくともしないのです。

安太郎さんは ずるずるとおしこまれ、みずうみのなかへ おとされそうになった そのとき おかあのいっていたことを おもいだしたのです。

「かっぱの あたまのさらにゃあ、三っつのあなが えーてるから それにゆびを つっこみゃ  かっぱは うごけなくなるんだど。」見るとたしかに 三っつのあなが あります。

とっさに 安太郎さんは ゆびを あなにいれました。

すると きゅうに かっぱの力は よわくなりました。

安太郎さんは、かっぱを 目よりもたかく さしあげ

えーいと なげとばしました。

ドボーン
ぶくぶくぶく
水の中で こんどは なげとばされた かっぱが おどろきました。
「ひゃーっ人げんて すげー力もちがいるんだなー なんであんなに つえーずらか・・・・・・?」

「・・・。」

よるになると かっぱは 安太郎さんのいえにでかけ そとからなかを そっとのぞいてみました。

安太郎さんは おかあと たのしそうに 夕はんをたべています。
あぶりざかなの いいにおいがして うまそうです。

「あのさかな、くってみてえーな、 力もちに なれるずらなー・・・。」

かっぱは あぶりざかなを たべたくて しかたありません。
かっぱは まい日 あぶりざかなのことばかり かんがえていました。
水の中にすむ かっぱには 火であぶる あぶりざかなの つくりかたが わかりませんでした。
たべられないと よけいにたべたいきもちは つよくなります・・・。

あるよの まよ中のことです。

かっぱは とうとうがまんできなくなり 安太郎さんのいえに そっと しのびこみました。そして・・・
ヒジロにさしてある あぶりざかなを いっぴきたべました。

「うめー!!なんちゅう うめえずらか。」
一ぴきたべたら さらにもう一ぴき さらにと かっぱは む中で むさぼりついていました。

「ぬすっと かっぱめが!!」
いつのまにか目をさました 安太郎さんが かっぱを にらんでいました。
そして、いきない あなにゆびをいれてきました。
かっぱは もうにげることは できません。

「すいません もうにどと ぬすんだりしねーから かにんしてくでー。」
かっぱは ないてたのみました。
「かっぱにゃー河童膏ちゅう くすりが あるから そのこせーかたを おせーますので いのちだけは たすけてくでー。」

安太郎さんは ひっしにたのむ かっぱを かわいそうとおもい ゆるし、にがしてやりました・・・。

そののち・・・かっぱのくすりは 安太郎さんの いえに だいだいつたわり、河口湖の 河童膏と ひょうばんとなりました。
安太郎さんのいえには かみにかかれた くすりのつくりかたが、いまでも のこっているそうです。


おわり

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